サッカーコラム |
雑誌や色々なサッカーサイトの情報を元に、自分なりにその情報をまとめたコラムです。これを読んで、少しでもサッカーを好きになってくれたら幸いですね。 |
トータル・フットボール |
オランダのサッカーは美しく勝つ至上命題としてチームを作り、魅力ある攻撃的チームの完成を常に意識して試合に臨んでおります。勝利を目指すのは簡単であるのにも係らず、オランダは美しい攻撃を目指す戦いをかねてより義務としてきました。勿論それには理由があるのです。それを知るにはまず、トータルフットボールを知る必用があります。 トータルフットボールとは 1950年代はじめ、オーストリアの専門家ヴィリー・メイスルが開発した「渦巻き」理論が元となっています。全員が守備を行い、全員で攻撃を行う。互いが互いを意識してポジションチェンジを繰り返し、まるで渦を渦巻いているようにボールを支配し、ゲームを支配するという理論であります。しかし、これを行うには、全員が同等であり特別の才能を持ったオールラウンダーでチームを結成し、しかも、その渦の流れをしっかり繋ぎとめる戦術眼を持ったリーダーが必要。故に、これは机上の空論で終るはずでした。 この20年後、1974年ドイツワールドカップでこの戦術を実践したチームが現れたのです。それがオランダなのです! トータルフットボールの申し子、ヨハン・クライフ 1974年…ギリギリの接戦で予選突破したオランダでしたが、開催数ヶ月前で監督交代劇が訪れます。ですが、この人事がオランダを大躍進させるのです! この時に、オランダの監督になったのは名将リヌス・ミケルス。主力がリタイアと悲劇の上塗りにあって、彼が採用したのはアヤックスに浸透させ続けた戦術、トータルフットボール。 激しいポジションチェンジと果敢なボール狩り、積極的なオフサイドトラップが特徴とし、開催まではダークホースでしかなかったオランダが、一躍優勝候補に上りつめ、準決勝ではブラジルを破り、堂々と決勝へと進出したのです!決勝戦までで14得点1失点。しかしその1失点もオウンゴールとオランダとの対戦国は一度もオランダゴールネットを揺らす事は出来なかったのです! そして、そのチームの中心にいたのはトータルフットボールの申し子、ヨハン・クライフ。現在でもオランダの英雄として国民から愛されている名選手。彼に憧れるサッカー選手も数多いのです。 このクライフはCFWであるにも係らず、ゲーム中はいたるところにその姿を現して、どの場所にいても、どのポジションにいても完璧な仕事を行ったのです。豊富なスタミナ・驚異的なスピード・目を張るテクニックの素晴らしさを兼ね備えた天才選手は、この難しい戦術を見事実践したのです。 とくに、決勝の西ドイツ戦。先制点を奪うまで西ドイツのメンバーは一度もボールに触れられなかったのです。しかし、ここがトータルフットボールの限界でした。 クライフの永遠のライバルであるフランツ・ベッケンバウアーはマンマーカーのフォクツにクライフのマークを命じ、ゲーム上から彼の姿を消すと、とたんにこの戦術は機能しなくなってしまったのです。 そう!同等の選手で形成されて始めて行えるこのトータルフットボールは、当初の目的とは真逆な形で…神の悪戯で生まれた稀代の天才の手で実現し、その彼が抑えられた場合、この戦術は機能しなくなるのも同然でした。 数年後、監督になったヨハン・クライフはアヤックス・バルセロナを率いて、自らが実践した攻撃的サッカーを監督としても実現し、選手としても監督としても成功を収める事にいたりました。 このカリスマな選手がオランダサッカーに多大な影響を与え、彼の思想である「美しく勝つ」は、今でもオランダサッカー選手に浸透しております。 しかし、このトータルフットボールはそれから、十数年後…80年代後半に新たな命を吹き込まれます。 グランデミランとゾーンプレス 89年と90年、チャンピオンズカップとトヨタカップを連覇したACミランは、黄金期を迎えており、恐ろしいほどの強さを誇っておりました。キャプテンであり、ACミランのディフェンスラインを統率していたバレージ・今でも現役でありトッププレイヤーとして活躍しているマルディーニ・そして、オランダトリオといわれたファンバステン・ライカールト・フリットの三人が加入したこのチームの強さをたたえてサポーターはグランデミラン(偉大なるミラン)と彼らを称えました。 しかし、ただメンバーが豪華だったから強かったわけではありません。このチームを率いていた名将:アリーゴ・サッキは彼らに一つの戦術を提唱します。それが、ゾーンプレスであり、専門家の中ではこれこそ真のトータルフットボールだ!といわせるほど完成度がありました。 数人で相手選手にプレッシャーをかけ、ドリブルコース・パスコースを共々封じ、ボールを奪っては高速のカウンターを仕掛ける戦術。非常に体力が必要ではありますが、効果は絶大であり、それを実践できるだけの選手に恵まれたミランだったからこそこの恐るべき強さを発揮できたのでしょう。 現代フットボール戦術に多大な影響を与えたともこのゾーンプレスは言われております。 今後のトータルフットボール トータルフットボールの申し子であるクライフの教えを受け、さらにアリーゴ・サッキからゾーンプレスを学んだ選手が、今、監督で活躍しております。それが、スペインに置いて国内リーグ連覇に導き、今年チャンピオンズリーグを制したバルセロナを率いる監督、フランク・ライカールト。 監督経験が無いのに代表監督に就任し(余談ですがファンバステンが代表監督就任の記事を見つけた当時、何かの冗談かと俺は本気で思いました。)、強豪が犇く予選リーグを無敗で突破!4年ぶりにオランダをワールドカップに導いたマルコ・ファンバステン。 この2人はミランの選手時代から顔を合わせれば【どうすれば理想的なチームを維持できるか?】を討論し、時には夜通しそれを行ったそうです。そして現在。監督としての手腕は、疑う人は居ません。もしかしたら、この2人がトータルフットボールを更なる進化させるかもしれませんし、その可能性は十分あると私は思います。 |